アナログ時計の2時43分は
まだ 何も汚れを知らない
清楚な乙女のようだ
伏せ目がちで
少し不安そうに
外界を窺っている
秒針に急き立てられながら
その波に乗れずに
おどおどしている
それが45分になると
はっきりしてきて
自我を持ち始める
50分にもなると
恋を知り
55分にもなると
したたかさを持ち
金銭や物の価値を知る
3時ちょうどには
まだ荒削りながらも
若々しく美しい
一人の大人の女性になる
しかし人生のおやつには
黒焦げのクッキーが出てくることを
彼女はまだ知らない
これから
一体どんな時間を過ごすのだろう
夜中まで
まだ長い
